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- 祭りに赴き文化を感じることが大切 / 「私が影響を受けた祭りとアート」Vol.2 光永百花(バレリーナ)
ESSAY
2022.09.09
祭りに赴き文化を感じることが大切 / 「私が影響を受けた祭りとアート」Vol.2 光永百花(バレリーナ)
Edit / Maru Arai
特集「祭り、ふたたび」のシリーズ「私が影響を受けた祭りとアート」では、表現活動を行う方々にご自身が影響を受けた祭りやアート、芸術祭のエッセイを執筆いただきます。今回はバレリーナの光永百花さん。西洋の古典というイメージが強いバレエですが、日本のお祭りや獅子舞が題材のバレエ作品があったり、芸術祭ではクラブミュージックとの融合が見られたりとバリエーション豊かな世界。光永百花さんご本人のエピソードと共にご紹介します。
遠いようで近い?!祭りと、バレエの世界
「クラシックバレエ」と「祭り」は一見遠いところにあるようで、実は近い世界のように思えます。なぜなら、実際の地域のお祭りや、皆さんがよく知るお祭りの様子をそのままバレエにした作品があるからです。例えば、バレエ『屏風』や『京の四季』などは日本人によって創られる日本の伝統文化を表現しています。新潟県西蒲原郡月潟村(現・南区月潟)を発祥の地とし、舞や曲芸を行い諸国を巡る旅芸人の一団「角兵衛獅子」をモデルにした作品もあります。私も『屏風』や『角兵衛獅子』をはじめ、過去にいくつか日本のお祭りを舞台とした作品に出演させて頂きました。獅子舞の被り物を身につけたり、着物を着て踊ったりと、日本の伝統である「祭り」を風化させずにバレエ芸術を媒体として日本の文化を世界に紹介する役割を担っています。
また、バレリーナ目線で「祭り」に参加してみると、カラフルな着物、提灯の色鮮やかさ、人々の活気、その土地ならではの匂い……など、その全てがアートのように感じます。そして、そこで感じたものを今度は自分が踊り手として、舞台上で表現していきます。そのためにも、私自身が実際の「祭り」に赴いてその文化を感じることが大切だと感じています。
2018年10月 京都バレエ団公演「屏風」
2020年8月 牧阿佐美バレヱ団公演「角兵衛獅子」
私が今年気になる芸術祭
今年の芸術祭のなかでは、「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」が気になります。2010年にはじまり、国内外の「EXPERIMENT (エクスペリメント) = 実験」的な舞台芸術を創造・発信し、芸術表現と社会を、新しい形の対話でつなぐことを目指した芸術祭。私自身にもゆかりのある、大好きな京都をもっと知りたいのと、積極的にバレエの演出を取り入れているところに興味があります。
例えば、2018年には、正当な舞踊教育を受けながらもクラブカルチャーにも精通している国際ダンスデュオが、ダブミュージックにあわせてバレエの代名詞のトゥシューズを履いて踊るという、ユニークな演目がありました。このコラボレーションはバレエの可能性を広げ、現代的で時代にあった素晴らしい取り組みだと思います。私もこのようなクリエーションにとても興味があり、様々な土地でその場所や気候を生かした踊り、アーティストとのコラボレーションなど積極的に取り組んでみたいです。
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2018より、セシリア・ベンゴレア&フランソワ・シェニョー《DUB LOVE》photo by Laurent Philippe
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭
2022年10月1日(土)〜2022年10月23日(日)
URLはこちら
大好きな地元千葉の「茂原七夕まつり」と、今年訪れた「大屋根夏まつりin日本橋」
私の出身地で小さい頃から何度も通っていて、とても記憶に残ってるお祭りが千葉県の「茂原七夕まつり」です。今年は泣く泣く中止となってしまいましたが、市民の皆さんが一致団結し、お店がズラッと並び、笹の葉に短冊をつけたモチーフがとても印象的で毎回賑わいをみせます。復活したら、ぜひ皆さんにも足を運んでいただきたいです。
この夏には、コロナ第7波に負けずに感染症対策を行いながら開催した「大屋根夏まつり2022 in NIHOMBASHI」に参加してきました。日本橋の老舗店舗の自慢の味を屋台に出店しており、日本橋老舗の味と魅力を堪能できます。昔ならではの東京の魅力と、近代的な建築が融合していて、活気と風情を感じることができました。夜になると裏路地に薄灯が入り、更に魅力が増して印象的でした。バレリーナとして、また日本人として、四季や風情を自分の身体で感じられる人でありたいと思います。
「茂原七夕まつり」HPより
「大屋根夏まつり2022 in NIHOMBASHI」にて。COREDO室町テラス1階「大屋根広場」にて8月4日〜8月7日まで開催された
茂原七夕まつり
7月下旬頃に茂原市にて開催。詳細は公式HPをご確認ください。
DOORS
光永百花
バレリーナ
千葉県生まれ、5歳よりバレエを始める。2008年Prix Deux Japan ジュニアの部 第2位 審査員特別賞受賞。2009年バレコン横浜ジュニアの部 第2位。2009年ユースアメリカグランプリNYファイナリスト。2010年 京都バレエ専門学校に入学、有馬えり子師事。京都バレエ団公演で「くるみ割り人形」クララ、金平糖、アラビア、「ドンキホーテ」森の女王、パリオペラ座 ヤン・サイズと「タイス」など全て公演に出演。2014年 NBA全国ジュニアバレエコンクール シニアの部 第1位。2014年 P.B.K.全国バレエコンクール シニアの部 第1位 京都府長賞 京都市長賞受賞。2014年 国立パリ・オペラ座バレエ学校 サマースクール留学。2015年 京都バレエ専門学校を卒業。2016年 フジテレビ「テラスハウス」に出演。2016年 スリーピングビューティーバレエコンクール ミス・バレリーナ受賞。2016年 牧阿佐美バレヱ団に入団。2019年ソリストに昇格。現在牧阿佐美バレヱ団にて、「三銃士」コンスタンス 「角兵衛獅子」姉 主演「アルルの女」ヴィヴェット 主演 「プリンシパルガラ」パキータ 主演「くるみ割り人形」アラビア、「ドンキホーテ」キトリ、キトリの友人、「ライモンダ」夢の場ソリスト、パドトロワ、「白鳥の湖」パドトロワ 「眠れる森の美女」6人の妖精 森の聖地の精、オーロラの友人、海外公演で「グランパドフィアンセ」など全ての公演に出演。現在TVCMなどにも多数出演中。
volume 03
祭り、ふたたび
古代より、世界のあらゆる場所で行われてきた「祭り」。
豊穣の感謝や祈り、慰霊のための儀式。現代における芸術祭、演劇祭、音楽や食のフェスティバル、地域の伝統的な祭り。時代にあわせて形を変えながらも、人々が集い、歌い、踊り、着飾り、日常と非日常の境界を行き来する行為を連綿と続けてきた歴史の先に、私たちは今存在しています。
そんな祭りという存在には、人間の根源的な欲望を解放する力や、生きる上での困難を乗り越えてきた人々の願いや逞しさが含まれているとも言えるのかもしれません。
感染症のパンデミック以降、ふたたび祭りが戻ってくる兆しが見えはじめた2022年の夏。祭りとは一体なにか、アートの視点から紐解いてみたいと思います。
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