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2023.08.18

アーティスト 藤川さき 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.21

Photo /Gyo Terauchi

独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、世界の些細な変化たちを作品のパーツとして構成し主に人の意思に通じた絵画を表現するアーティスト、藤川さきさんの背景に迫ります。

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アーティスト 田島治樹 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.20はこちら!

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アーティスト 田島治樹 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.20

  • #アートテラーとに〜 #連載

今回の作家:藤川さき

身の回りの環境や対話から生まれた興味や疑問をもとに、作品制作を行なう。主に人の意思に通じた絵画表現を多く発表する。

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《ピンクは滲む》2022 キャンバスに油彩 , 910mmx727mm

 

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藤川さきさんに質問です。(とに〜)

以前、どこかのギャラリーの展覧会で、藤川さきさんの作品を拝見いたしました。その時は確か、アクリル絵具でストーリー性が感じられるどこかファンタジックな絵画を描かれていたような。
しかし、ここ近年、久しぶりに藤川さんの作品を観たら、女性がモチーフであることは変わらないものの、劇的にキャラ変されていました。油絵具の物質感がダイレクトに伝わってくる肉食系(?)の作風に!正直なところ、一瞬、同姓同名の別の人かと思ってしまったほど。
藤川さんに一体何があったのか?ずっと気になっていたので、この機会に是非教えていただけましたら幸いです。

 

Q01. 作家を目指したきっかけは?
中学生の頃、パソコンで絵を描き、掲示板でそれを介して交流をした楽しさがきっかけです。

 

Q02. ここ近年、画風がガラッと変わりましたが、何があったのですか?
アクリル絵具から油絵具に画材が変わったのが視覚的な作風の変化に一番影響していると思います。画材の変化については、以前は軽やかさを強調できるアクリル絵具を使っていましたが、コロナ前後の世相や心境の変化でどうしても作りたい物や思考と合わせると画面としての軽やかさと、自身の想いの重さに差異が生じてしまい、合っている絵の具を探した結果、油絵具での表現に辿り着きました。もともと油絵科で入学当初までは描いていたので、やっと一周して戻ったとも思っています。

 

Q03. 現在の描き方で一番こだわっているところを教えてください。
全ての迷いや決断などのプロセスを作品の積層として還すこと。

「壊せばうごく解像度」 税込:280,500円

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壊せばうごく解像度

 

Q04. 女性を描く上で、最も難しいと感じる部分はどこですか?
自身の性が女性だからこそかもしれませんが、肌の質感ひとつや目元の曲線ひとつで絵の中の人物に過度な感情を感じ取ってしまうことがあり、あくまでも女性にはモチーフ(器)として存在してもらっているからこそ、その感情のツマミに関わる表現ひとつひとつには真摯に、慎重でなければいけないと思っています。

 

Q05. 藤川さんの作品はタイトルも特徴的ですよね。タイトルを決めてから描いていますか?それとも描き終わってからタイトルを決めていますか?
だいたい決めてから始めますが、両方のパターンがあります。キャンバスと対話する中で生まれる絵の具の重なり合いを繰り返していくうち、当初のテーマより一歩二歩深まった場所、または俯瞰したような場所へ到達することがあり、その際はタイトルに違和感が生まれるので変更します。

 

Q06. 作品の画面からもの凄いパワーが伝わってきます。描いている最中に、エネルギー切れになりませんか?
体を動かすので、体力面で切れることは度々あります!頭の方のエネルギーは、絵を描くことからむしろ復活するところがあるので、あまり切れません。スポ根なので作る中で頭をもっと使えば新しい発見から頭のエネルギーは復活すると思っています。むしろ日常生活のほうが簡単にエネルギーは切れます。笑

 

Q07. 作品のイメージとご自身にギャップはあると言われますか?
ちょっと喋るとなんか違う…と言われて、それよりさらに喋るとやっぱ本人だねと言われます。

 

Q08. アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など
去年念願の大きなアトリエに引っ越したので、大きな作品を離れて見ることができるこの広さです。描きやすい!

「たずさえ歩く」税込:374,000円

「たずさえ歩く」税込:374,000円

たずさえ歩く

 

Q09. 職業病だなぁと思うことは?
空や建物の重なりたちを見て、どの順番で絵の具をのせたら良い形の絵になるか考えること

 

Q10. 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?
エゴンシーレのドローイング

 

Q11. 今年の夏に行こうと思っているところはありますか?
地域のお祭りです!手作り感が最高です。ひとつではなくいくつも行こうとしてます。

 

Q12. 毎週必ず観ているテレビ番組はありますか?
最近あまりリアルタイムで見る時間がないので基本はTVerとparavi派ですが、クレイジージャーニーを少しずつ見るのにハマっています。丸山ゴンザレスさんの回が好きです!!

 

Q13. もし、一回だけ過去にも未来にもタイムスリップできるとしたら、どの時代に行って何をしますか?
往復で帰って来れるのなら、亡くなった祖父祖母全員が揃ってる時代が見てみたいです。

 

Q14. 夏なので、怖い話を教えてください。
4歳の子供が17時半に力尽きて昼寝をし始めたこと
(子育てしてる人にだけわかる超怪談です)

 

Q15. もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
作ることでどうにか自分の中の滞りが解決しているところがあるので、それがなければ死んでいた気しかしません…。

「積層」や「重なり合い」。これが藤川さんにとって重要なキーワードなのですね。
作品自体も絵の具の重なり合いが特色的で、それが魅力的でもありますが。その作風はポンと生まれたわけではなく、ご自身や社会の変化などの積み重ねがあって生まれたものと知り、より魅力的に感じられました。
あと、自分で言うのもなんですが、改めてこの『作家のアイデンティティ』という企画はイイですね。真面目な回答からクスっとできる回答まで、15の回答が積み重なることで藤川さんの人となりが少し見えた気がしました。
空や建物の重なりたちを見て、描き方の手順を考えてしまうのはなかなかの職業病ですね(笑)。それはどうぞほどほどに。

Information
今後の展示スケジュール一覧

SIGNS OF A NEW CULTURE vol.17

■会期
2023年9月21()→10月4() ※最終日は18時閉場

■会場
Artglorieux GALLERY OF TOKYO
東京都中央区銀座六丁目101 GINZA SIX 5F

※一部作品は店頭限定販売となりますのでご了承ください。

■入場
  無料

詳しくはこちら

 

「1Gallery Art Fair」by JPS Gallery

■会期
2023年8月26日(土)〜9月7日(木)

■会場
GINZA SIX 銀座蔦屋書店

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ARTIST

藤川さき

アーティスト

1990 年 東京都生まれ 2013 年 多摩美術大学絵画学科油画専攻 卒業 身の回りの環境や対話から生まれた興味や疑問をもとに、作品制作を行なう。主に人の意思に通じた絵画表現を多く発表する。

DOORS

アートテラー・とに~

アートテラー

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館) 

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